「飽食の時代」とされている現代の日本。ところが場所が変われば事情も一変します。
食べるものがなく極限まで追いつめられた人間はどうするか。食糧事情が厳しい飢餓が発生している北朝鮮では、人肉食が行われているという壮絶な実態が新たに明らかになりました。
韓国の政府系研究機関、統一研究院が新たに作成した人権白書では、公開処刑を目撃したという脱北者230人の証言を集計。これによると、2006年以降に公開処刑された者の中には、人肉を食べたり売ったりした者が少なくとも3人は含まれていたといいます。
ある男は同僚を殺害して体の一部を食べ、残りを羊の肉と偽って市場で販売しようとしたといいます。また中国との国境に位置する恵山市では3年前、食糧不足に困窮した者が少女を殺して食べる事件が発生。3件目の事件は昨年発生したようですが、詳細は分かっていません。
このニュースを報道した韓国の聯合ニュースは、北朝鮮の情報統制が厳しいため、いずれの事件も裏づけを取ることはできなかったとしています。
北朝鮮ではデノミネーション(通貨の切り上げ、切り下げ。北朝鮮は同国通貨ウォンの100分の1のデノミを行いました)を断行した09年以降、食糧難が一層悪化したとみられています。
しかし、01年に脱北したある公務員の証言によると、99年以降にも10件以上の人肉食事件が発覚したといいます。
200万人近くが死亡する大飢饉が発生した90年代半ばにも、人肉食事件が複数発生したと言われています。
常軌を逸した人権侵害疑惑は他にもあります。4月には、ワシントンの人権団体「米北朝鮮人権委員会」が北朝鮮の強制労働収容所で行われている過酷な人権侵害を告発したばかりでした。
同団体は衛星画像や収容所の脱走者、元看守の証言を収集して分析。その結果、約20万人の政治犯が収容所に入れられており、1人の政治犯のために家族全員が収容されているケースもあると指摘しています。
当の北朝鮮政府は、強制労働収容所の存在そのものを否定しています。
金正恩がまるまると太っているのは対照的に、かなり切迫した食糧事情の中で、やむを得ず人肉に手をつける人がいるのが現状のようです。しかし、この状況を解決するために食糧を送っても市民に行き渡ることがないため、問題の解決はそう簡単ではなさそうですね。