アメリカ・テキサス州にあるテネシー大学では、法人類学研究において伝説的な存在とされるビル・バス博士によってテネシー大学人類学研究施設が設立されました。この法医学施設では、研究のために提供された死体をさまざまな条件の下に晒し、さまざまな温度下で、種々雑多な虫にたからせて、あらゆる死後損傷を死体に試み、研究しています。
この法医学施設は、「ボディファーム(死体農場)」と呼ばれており、大学の敷地内におよそ1ヘクタールの屋外実験場がおかれています。この実験場では、死体をあらゆる環境にさらし変化を観察します。例えば、ゴミ袋に無造作に詰め込まれる、カーペットで巻く、木の幹にくくりつける、浅く掘った墓穴に埋める、野ざらしのままや池に放り込むなど千差万別です。
これらの骨は、パティ・ロビンソンさんの人骨です。緑色の服を着たケイト・スプラドリー助教授が、死体の状況を観察しています。ロビンソンさんの死体は、5週間以上そのままの状態で実験場に横たわっていましたが、ハゲタカの群れがやってきて食い散らかし始めると1時間ほどで骨だけになってしまいました。
これらの研究は、実際の事件でも大いに役立つ情報を提供してくれます。これまでは、豚の死骸を使って擬似的に人間の腐敗を再現していましたが、本物の人間を使うことで研究はより正確なものとなっています。
パティ・ロビンソンさんは、乳がんによって72歳で亡くなった女性でした。献体を決めたのは息子のジェームスさんで、このプロジェクトに価値を見出したからだといいます。「もし、母が戻ってきて、何が行われているのかを知ればきっと喜ぶだろう」とジェームスさんは語りました。
非常にグロテスクで目を背けたくなるような写真や動画ですが、これらの研究があるからこそ事件や事故の真相が究明されているんですね。献体して下さった方に感謝しつつ、こういった研究をさらに進めていく必要がありそうです。