2日、超巨大ブラックホールが近くの星を飲み込む一部始終の観測に成功したと、米国の研究チームが発表しました。1万年に1度ほどしか起こらないまれな現象だといいます。
周囲の物質を吸い込むブラックホールは普段は銀河の中心に潜んでいるため確認されにくいですが、吸い込まれた恒星のかけらによって時折その存在を追うことができます。
アメリカ・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究者ライアン・チョーノック氏は「ブラックホールは、サメのように底無しの胃袋を持った殺害マシンだと誤解されている」と話します。「しかし、実はその一生のほとんどを静かに過ごしていて時折、近づき過ぎた星に猛然と襲い掛かるだけなのだ」
ブラックホールに接近し過ぎた星は、ブラックホールの重力によって引き裂かれ、ガスを吸い出されます。そのガスが摩擦熱で光ることによって、普段は静かな宇宙の殺し屋の隠れ家が明らかになるといいます。
シミュレーション映像
今回の観測は、ハワイ州マウイ島のハレアカラ山にある望遠鏡や米航空宇宙局(NASA)の衛星を用いて行われ、このガスのフレアを2010年5月に初めて確認。光が消えるまでの約1年間、観測を続けました。
チョーノック氏と共に研究を率いたアメリカのジョンズ・ホプキンス大学のSuvi Gezari氏は、「観測を始めた当初、フレアの光が明るすぎて銀河までの距離を正確に測ることができず、フレアの正体が特定できなかった」と話しています。
観測を数か月続けた結果、27億光年離れた銀河の中心にあるブラックホールが特定されました。このブラックホールは太陽の300万倍ほどの質量を持ち、われわれが住む天の川銀河の中心にあるブラックホールとほぼ同サイズだといいます。
犠牲となった星は恐らく星の晩年にあたる赤色巨星段階に達した恒星で、1天文単位(地球と太陽の間の平均距離、約1億5000万キロ)の3分の1ほどの距離までブラックホールの近くに迷い込んだため、不運な最後を遂げることとなったとみられています。
Gezari氏によれば、今回の発見は「ブラックホールによって引き裂かれた星の種類と、犯人であるブラックホールの大きさを特定するための十分な情報が得られた初めてのケース」だといいます。