2月18日夜(日本時間19日未明)に 第62回ベルリン国際映画祭の短編部門で最高賞に続く「銀熊賞」(審査員賞)に、和田淳(あつし)監督(31歳)によるフランス映画「グレートラビット」に選ばれました。
7分間の作品は、ふくよかな体格の少年を主人公としており、彼の世界では、かつてウサギを崇高で神秘的な存在とされ「グレート(The Great)」と呼ばれていました。時は流れ、思考が変わった現代社会でも「グレート」と呼ばれ続ける理由を探る物語です。キャラクターはシャープペンシルで描かれ、ユーモラスな動きをしています。
トレーラーでは、主人公の少年やウサギが登場しますが、独特の雰囲気を感じることができます。
同作のねらいについて和田監督は「不服従とは、服従させる者と服従させられる者の関係があって初めて成り立つ。はっきりした上下や善悪、尊卑の関係が見えにくい世の中では、何が正しいのか判断が難しくなっている。一体何に服従させられているのかすら分からない時もある。その分からなさを描いた」と説明しています。
同作はドイツやフランスでのテレビ放送が予定されているという。
神戸市出身の和田監督はロンドン在住。大阪教育大や東京芸術大大学院などで映像を学んだ後、平成14年ごろから独学でアニメ制作を始めました。「間」と「気持ちいい動き」をテーマに短編作品を発表し、これまで「わからないブタ」(平成22年)がロンドン国際アニメーション映画祭グランプリや文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞するなど、国内外の映画祭で評価を受けてきました。
ただ、日本でのインディペンデント(独立系)作家を取り巻く環境は厳しく、資金調達や、国際的な売り込みのシステムが確立していません。今回の受賞作が「日本映画」ではない理由もそこにあります。本作はパリを拠点に日本の映像作家の作品の国際的な製作・配給を行っている「カルトブランシュ」などが手掛けています。
一昨年に設立された同社は、「和田監督など日本の若手監督の作品に惚れ込んだ。映画文化に手厚く、理解の深いフランスの共同プロデューサーとCNC(フランス映画庁)などの援助を得て、今回初めて実現した製作企画となった」と話しています。
独立して作品制作をしている作家が、上手くやっていけるようなシステムを構築しないとジャパニメーションも衰退するかもしれませんね。