80歳代のおばあさんの修復によってサルのように変貌してしまった102年前のキリストの肖像画が、再び大きな話題となっています。現在、この変貌を遂げたフレスコ画を見ようと、スペイン北東部ボルハを訪れる人々が数百人規模に急増しているというのです。さらに、ネット上では「修復反対」の声まで上がっています。
この肖像画はスペイン人画家エリアス・ガルシア・マルティネスが1910年に描いた「Ecce Homo(この人を見よ)」で、ボルハ市内の教会の柱に直接描かれています。傷みが目立ち始めたため、アマチュア画家の女性セシリア・ヒメネスさんが善意で修復を試みたところ大失敗。オリジナルと似ても似つかないとして地元住民から苦情が殺到し、静かな町だったボルハに、世界中のメディアの注目が一気に集まりました。
肖像画は本来、いばらの冠をかぶせられたイエス・キリストの姿を描いたものでしたが、「修復」後は顔色の悪いサルのようで、目鼻立ちはバランスが悪く、頭を毛皮が覆っているように見えるような状態に。一部メディアはこれを史上最悪の修復と伝えています。
ところが、この修復に端を発した一連の騒動が、さらに思わぬ事態へと発展してしまいました。それはなんと、修復したフレスコ画が一部の人々から高い評価を受けるというものでした。
25日には教会の外に、興味津々の訪問者の行列ができ、公共テレビ放送のインタビューに応じたある女性は、「以前の絵も大変素晴らしかったけれど、わたしは本当にこれ(修復後の肖像画)が気に入っています」と語りました。
さらにネット上では、フレスコ画を模したパロディTシャツや画像が登場。ボルハ市に原画を復元する計画を思いとどまるよう求めるオンライン嘆願書には、既に1万8000人もの署名が集まっています。
一方でボルハの市議会議員によると、再修復ができない場合には、フレスコ画を写真で覆うことも検討しているといいます。
大きな話題となったことで、騒動が拡大している今回のフレスコ画修復失敗事件。今後、フレスコ画がどのようになるのかが注目されます。