去年10月、滋賀県大津市で当時中学2年の男子生徒が自宅マンションから飛び降り自殺した事件で、新たに学校側が生徒にかん口令を敷いていたことが明らかとなりました。また、ネットでは加害者生徒に憤りを感じた人々が、生徒の特定を進めており、すでに生徒とされる人物の実名と身辺が公開される状態となっています。
同じ中学校の生徒によると「蜂の死骸を食べさせられかけてて」「男子生徒3、4人に囲まれて、トイレの隅っこで殴られたり蹴られたり、悪口を言われていた」などのいじめが行われていたといいます。
生徒の両親は真相の究明を求め、大津市などに損害賠償を求める裁判を起こしています。生徒の自殺後、大津市の教育委員会は全校生徒を対象にアンケート調査を実施。そこには「自殺の練習をさせられていた」という、いじめと自殺の関係に深く関わる回答が16人もの生徒から寄せられていました。しかし、市教委は加害生徒に直接確認することもなく、この事実を公表しませんでした。
7月4日、大津市教育委員会の澤村憲次教育長は「調査をした結果、確認できたことは公表した。今回の分については事実だったと確認できていない」と発表しました。
そして、自殺との因果関係は分からないと結論づけました。学校や教育委員会は、いじめの調査結果を一部しか公表していませんでしたが、不誠実な対応は、それだけにとどまりませんでした。
同じ中学校の生徒からは「(学校は)事件当日から『誰かに聞かれても無視しとけ』」「このこと(自殺の件)は、あまりしゃべらないようにとか。口止めみたいな」という証言があります。
男子生徒の自殺後、学校は在校生に対し、生徒個人やいじめについて口外しないよう、口止めしていました。大津市の越直美市長も、この口止めを認めています。
大津市・越直美市長は、「昨年、この事件があったとき、『いろいろ聞かれても無理に話す必要はない』と言ったことは聞いた。新しく何か(口止めについて)言ったという事実はなかったと聞いている」と語りました。
しかし、6日。同じ中学校の生徒から「きょう(校内)放送あった。全校集めた(校内)放送で、『変なことしゃべるなよ』って」という証言が飛び出し、事件が再燃してからも口止めが行われていたことが明らかとなりました。
これに対して市教委は、「不確かなことを話さないように指導しているもので問題はない」としています。
この対応に対して原告の弁護人である石川賢治弁護士は「かん口令というのは、情報をコントロールする手法。生徒の証言をコントロールすることになる。事実解明に消極的に作用することを危惧する」と述べました。
男子生徒の死亡からまもなく9ヶ月。越市長は、教育委員会による調査が不十分だったことを認め、再調査に乗り出すことを決めました。
また、7月に入ってからの一連の報道とネット上の炎上によって、問題に関心を持つ人が急増。ネットでは加害生徒とされる人物の特定、事件の真相追及、事件後に加害生徒がネット上で発言したとされるコメントが出回る事態となっています。
この不確かな情報の中には、「自殺した生徒が緊急搬送された病院が遠く、加害生徒の親族と関係性があるため自殺ではなく他殺ではないのか？」という推測までなされています。
一方で、加害生徒を特定しネット上で攻撃する行為やその家族について情報を開示することに「やりすぎ」「加害生徒が行ったいじめと同じ」といった声も上がっています。
さらに今回のいじめ自殺事件は、海外のニュースでも取り上げられており、その問題の影響力と深刻さが浮き彫りとなっています。
ネット上の情報や報道からは、いじめた側の生徒があまりにも冷酷で反省が見られないことがうかがえ、さらに行政の隠蔽体質が露呈したといえます。一方で、加害生徒に対する感情的な誹謗中傷も問題視されおり、事件的な要素以外にもさまざまな倫理的・社会的要素が、この問題の難しさと複雑さが多くの人の頭を擡げているようです。
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