恐怖におののきながら死んだバッタの死骸は、安らかに死んだバッタの死骸とは異なる影響を土壌に与える。このような内容の論文が15日発行の米科学誌サイエンスに発表されました。バッタの恐怖が環境に影響を与えるとは、いったいどういうことなのでしょうか。
論文の主執筆者でイスラエルのエルサレム・ヘブライ大学の研究者Dror Hawlena氏は、同誌のウェブサイトに掲載された音声インタビューの中で、この研究結果は「確かに少しとっぴな話に聞こえる」と語りました。
Hawlena氏は米エール大学の研究者らと共に、クモにおびえさせられたバッタの死骸を使った実験を行いました。
実験では、まずバッタだけを入れた籠とバッタとクモを一緒に入れた籠を用意し、草木が茂る自然の中に置きました。バッタが実際に食べられてしまうことを防ぐため、クモの口はのりを使ってふさぎ、バッタには純粋な恐怖のみを感じさせました。
バッタが死んだ後、Hawlena氏はその死骸を研究室に持ち帰り詳しく分析しました。すると、恐怖を与えられたバッタの体の窒素に対する炭素の割合が、安らかに死んだバッタと比べて4%増加していることを発見しました。
また、このわずかな違いが原因で、恐怖を感じたバッタの死骸を入れた土壌では、落ち葉など植物性有機物の分解速度が大幅に遅くなることが確認されました。
Hawlena氏は、干ばつや酷暑によるストレスでも恐怖と同様の効果が生まれ、土壌成分が変化して農作物の収量や植物の成長サイクルに永続的な影響を与える可能性があると指摘しています。
生物の心理が自然に影響を与えるということが分かった今回の実験。もしこれが本当なら、バッタに限らずあらゆる生物にも同じような現象が起こっているかもしれませんね。