東京大学などの研究グループは、大型商船の燃料消費を大幅に低減させることを目指した「ウィンドチャレンジャー計画」を進めています。
これは、幅20m高さ50mの伸縮式の巨大な帆を使って、風力エネルギーを最大限に利用しようというもので、横浜~シアトル航路などの航海シミュレーションを行った結果、帆とエンジンのハイブリッド航海で年間平均30%程度の燃料消費低減が可能であることが分かっています。最新技術によって、これまでにない洗練された帆船を建造することができるようになりました。
東京大学の鵜澤潔教授は「現在の技術を使うと、大きな帆を作ることができて、なおかつそれを無人でコントロールできます。航海術に対しても情報ネットワークを通じて海洋情報やその先の天候を予測する事で、安全な航行もできます。昔無くなった帆船という風の力を使う方法というのが実は成立するんです」と語ります。
帆は、最大の推進力を得られるよう一本一本が異なる角度に制御されます。また5枚のブレードで構成しているので、停泊時や嵐の時には、縦方向に1/5まで縮めることができます。
この帆は従来の帆とは全く異なった構造をしています。曲面構造をしており、伸び縮みするため中が空洞となっています。セイルに相当する部分は布ではなくて、アルミやFRPを使った硬い帆としています。つまり、飛行機のような羽がついているイメージになるといいます。
コンピュータによるシミュレーションと縮尺模型を使った風洞試験から、横風を受けている場合に特に省エネ効率が高いという結果が出ています。つまり、最短距離の航路ではなく、風の強さや向き、天候を計算に入れた最適な航路を選ぶことで、より速く、より燃料消費を抑えた航海が可能となります。
帆1本当たりの費用は約2億円で、25%を超える燃料削減が可能だということ。計算では5~10年で帆を追加する為のコストは回収できることになるといいます。現時点で基礎研究の段階が終了しており、これから2年かけて1/2サイズの試験機を作成し、この構造についての確認をする予定だといいます。最終的には2016年以降の就航を目指しています。
昔の技術に現在の技術を加える、まさに「温故知新」のアイデアですね。この帆船の登場によって、航路も多様化するかもしれません。