ハイテク義手の未来についてお伝えしたばかりですが、パプアニューギニアの指にまつわる伝統をご紹介します。
インドネシア領イリアンジャヤの中央高地に住む一夫多妻制の部族ダニ族には、かつて家族や近縁の男性が亡くなった、葬儀の場で、特に若い女性や少女の指を切断するという風習が存在していました。そして、悲しみを表現するために、粘土や灰を顔に塗って化粧をしていたといいます、
この指を切断するという儀式は、死んだ人間の魂が強力なものだという宗教的な考えに沿って、それをなだめて追い払うために行われていました。また、痛みを死者と共有するという意味や痛みによって死の悲しみを忘れるための意味合いもあります。
フィールドワークの記録によると、実際には女性は無理やりに葬儀の現場に連れてさせられ、上腕部をきつく縛り、手を岩に打ちつけてしびれさせ痛覚を弱めたうえで、葬儀専門職の手によって石斧で指の第二関節から先を切断されたようです。切断後は、手をすぐに葉でくるんで止血します。その後、女性はまる1日、手を上げた状態で過ごすとのことです。
葬儀にあたり、「どの女性が指を切断されるのか」という選択は、親戚内の重鎮的存在の男性が決める場合が多いとされます。したがって、1人の女性が何度も指を切断されることも珍しくなく、ほとんどの指の先がない女性もいるようです。ただ、生活をする上で支障がないように、親指は切断されることはほとんどなく、切断も根本からではないため、だいたいの女性は切断後も家事にあまり問題なく従事できるようです。
しかし、1960年代にダニ族がキリスト教の宣教師に発見されてからは、徐々にこの慣習はなくなっていき、現在はインドネシア政府による禁止や宣教師の誘導によって、指切断の儀式はほとんど行われなくなりました。
世界には、まだまだ知らない文化が存在するですね。