ヨーロッパの北にあるフェロー諸島では、2011年11月22日に毎年恒例の捕鯨「Grindadrap」が行われました。捕鯨文化が息づくこの地では、住民たちによって数百頭のゴンドウクジラが潰され、あたり一面の海がクジラの血で真っ赤に染まります。
今回は今年行われた捕鯨の様子をとらえた写真をご紹介します。
フェロー諸島は、スコットランドのシェトランド諸島およびノルウェー西海岸とアイスランドの間にある北大西洋の諸島であり、デンマークの自治領となっています。
この地には、9世紀頃からノルウェー西部のノルマン人(ヴァイキング)が入植し、11世紀にはノルウェー領となりました。1380年、ノルウェーとデンマークが同君連合(後のカルマル同盟につながる)に入って以降は、基本的にデンマークの支配地域となっています。
ヴァイキングの流れを継ぐ彼らは、1000年以上前から伝統的に海洋哺乳類の狩猟をしており、このゴンドウクジラ漁もその一環です。
捕獲方法は、まずボートで沖に出てクジラの群れを見つけます。その後、群れを追い込むのに十分なボートを用意し、群れを囲い込んで浜辺へと追い込みます。クジラを浜に打ち上げると、トゲの付いたロープをクジラに突き刺して動きを封じ、脊髄や動脈を切断することで殺傷します。そのためクジラは多量に出血し、海が血で真っ赤になります。
クジラ漁は商業目的で行われるものではなく、採取したクジラの肉は地域コミュニティーの人々に平等に配当され、住民たちの食料となります。そのため、販売することはできません。
近年では、動物保護団体と国際捕鯨委員会からの批判にも関わらず、毎年数百頭~数千頭のクジラが殺されています。また、アメリカの鯨類学会は、ゴンドウクジラが絶滅するほどの危機にさらされてはいないが、この海域では個体数に顕著な減少が見られていることを報告しています。
日本では映画『ザ・コーヴ』などによって文化や風習、環境問題などを絡めた賛否両論が巻き起こりました。捕鯨問題に関して言えば、皆で話し合って納得する解決策を講じるしかありません。ただ、記者から言えることは、鯨の刺身で熱燗を一杯やるのは寒い冬にはうってつけだということだけです。