以前、当サイトでもお伝えしていました「イラン国内で日本古来の忍術を習う女性が増えている」とのロイター通信の報道を巡り、イラン政府が反発、記事化したテヘラン支局の記者らの活動資格を停止する事態に発展しています。問題となったのは「数千人の女性忍者が暗殺者として訓練されている」との記事見出し。取材を受けた女性らも「名誉を汚された」としてロイター通信を提訴するなど波紋を広げています。
ロイター通信は2月16日、テヘラン郊外にある忍術道場の紹介記事を配信しました。その内容は、黒ずくめの女性らによる素手での対戦や刀を使った訓練の様子で、映像と記事として伝えました。その中で、女性の1人が「国を守るためなら習った技術も使う」などと答えたため、忍術と暗殺を結びつける見出しが付けられたとみられています。
この見出しについて、イラン文化・イスラム指導省の抗議を受け、ロイター通信は10日後に見出しを訂正したが、イスラム指導省はテヘランで活動するロイターの記者ら11人の資格を停止すると通告しました。停止期間は不明。
また、ロイターの取材を受けた女性はイラン国営テレビに「国を守るという当然のことを答えたのに、記者が曲解した。私たちは忍術をスポーツとして楽しんでいるだけだ」と語りました。
イラン政府は外国メディアの厳しい監視で知られ、政府やイスラム教を中傷、批判したと判断すれば記者証を取り上げ、国外退去させられます。「忍者報道」をここまで問題視するのは異例ですが、核開発問題を巡り米欧諸国やイスラエルとの関係が緊迫する中、「暗殺者」との表現に過敏に反応したとみられています。
今回の一番の被害者は、純粋にスポーツとして忍術を学んでいる人々です。ロイター通信の報道の仕方にも問題がありますが、それを政治利用するイラン政府などにも問題があるといえそうですね。