経済学者であるアレックス・タバロックが、自由貿易とグローバル化により、分断された世界は誰も予想し得なかった「アイデアを共有する、より健康で幸福、豊かなコミュニティー」に形作られると語ります。楽観的なトークにより「陰気な科学」が光を放ちます。
アレックス・タバロックは、近年になり自由貿易とグローバル化がより一層進んだことによって物理的な壁以外にも、政治、経済、通信などを分断していた障壁が打ち破られたと指摘します。そして、そのことによって世界中のあらゆる国・地域で経済発展が進んでいることをグラフを用いて説明します。また、これらの変化の源となっているのが、研究開発(R&D)費が高く製造コストが低いアイデアによって生み出される最先端分野によるものだとします。
そして、アイデア(知識)というものには非競合性という物質にはない特殊な性質があるといいます。これを具体的に言えば、例えば1冊の本を書いたとした場合、1人が読むのも1万人が読むのも書き手にとっては同じ労力のため、市場が広がれば広がるだけ書き手のインセンティブは増すということです。つまり、研究開発(R&D)費が同じでも世界化した巨大な市場ならインセンティブが増すため採算が合い、このことから生まれるアイデア(知識)がさらに増える共有が加速されるといいます。
情報化社会と生産システムの変化という点については、以前ご紹介したアルビン・トフラーが語る「第三の波」と未来の富を見ていただければよく分かりますが、市場が広がることでアイデア(知識)の価値が増すという点は、現在急速に進んでいるグローバル化を大きく後押しするロジックです。グローバル化によるさまざまな問題は指摘されていますが、少なくとも現時点までは人類の進むべき方向が間違っていないようです。