スウェーデンの通信機器メーカーエリクソンは、人間の体を通信ネットワーク化することによって触れるだけでデータを送受信できる人体通信技術「Connected Me」の開発を進めています。
片手に携帯電話、もう一方の手でデバイスに触ると、即座に高速で情報を送受信できるというこの技術は、将来「触る」という動作を、インターネットその他のデジタル・サービスにアクセスする簡単で賢明な方法とするといいます。
「Connected Me」は、人間に微弱な信号を流すことで通信ネットワーク化するシステム。人体を伝送路として6~10Mbpsの通信速度を達成するというコンセプトを初めて実証しました。
またすでにスマートフォンからの音楽のストリーミング伝送、携帯電話で撮った写真の送信、デバイス上のWebリンクの選択、パスコード送信によるドアの解錠を含む多数のユース・ケースが開発されています。
デモで使われているスマートフォンには、容量性データ伝送を実現する特別なデジタル回路が実装されています。回路は信号を人体に配信するプレートに接続されます。他方の受信機には、人体を通過した微弱信号を識別する同様の回路とプレートが配置されています。
情報は、送信機の電極で電圧を変調し、受信機の電極で電位の変化を検出することで送信されます。電位の変化に並行して小量の電流が人体を流れます。ここでは物理的には容量性カップリングと呼ばれる現象が利用されています。
重要なのは、容量性カップリングで人体のような有機的な素材を介して情報を送信できることだといいます。容量性カップリングと通常のデジタル通信を組み合わせることで、単独の技術では達成が困難または不可能な新たなイノベーションとインタラクションを実現できるといいます。
危険性については、使用する電力レベルは低いため問題ないとのこと。ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)が策定し、WHO(世界保健機関)が公認した標準に準拠しているといいます。
利用法としては、たとえば車やホテルの部屋の鍵を掛けるときに自分の体を電子回路としてや、手で触るだけでお店で支払いなどが想定されています。他にもプリンターに接続して携帯電話にある文書を印刷することなどが挙げられます。また、Bluetoothほどエネルギーを消費しません。
データの通信速度の観点からは、サービスを次のようにグループ分けできます。
低速
・着ることによるペアリング (Bluetoothなど)
・ドアや箱の開閉
・支払い
・体内シグナリング (体温など)
・マシンとのメッセージ交換
・Webページヘのリンク送受信
中速
・電話のファイルを画面上に表示
・ファイルの印刷または保存
・人対人の名刺・プレイリスト等の交換
・装着型または埋め込み型の医療機器
高速
・イヤホンへの音楽送信
・動画伝送
・マルチメディア拡張
触れるだけでデータのやり取りができ、さらに触れないとデータ通信ができないためセキュリティの観点からもメリットがあるこの技術。将来、触ることの意味が大きく変わるかもしれませんね。