ダン・アリエリーは私たちのモラルに潜む落とし穴に注目する行動経済学者です。何故、ずるいことをしたり、(時として)盗みを働いても平気だという考え方が生まれてくるのか、その隠された真実を探ります。ユニークで愉快な実験を通して、彼は人が「予想通りに不合理」で無意識のうちに自分たちの判断を左右されているのだと指摘します。
ダン・アリエリーは、看護師から受けた自身のヤケドの処置から痛みに対する研究を始めました。その結果から、看護婦の処置は最適ではなかったといいます。
そして、この例をはじめとして様々な実験の結果から、人間の不正は経済学の原理に沿ったものではないことを明らかとしました。経済学的に言えば、不正の大きさと対価の大きさは比例しますが、実際には不正の大小に関わらず少しの対価を得ていたといいます。
こういった非合理的な現象が発生する理由は、人間は「超えてはいけない一線」を設定し、その範囲内で不正から利益を得ようとするためだと分析します。そしてこの「超えてはいけない一線」を「私的補正因子」とします。
「私的補正因子」は、現金が別のものである場合や同じグループの人間が不正をすることで増加することが分かりました。
これらの研究結果からも分かるように、人間は無意識や直感によって多くの決断を下しており、その決断が間違っていることもしばしばであるようです。この間違いを改善するためには、「私的補正因子」を理解し、常に自分を疑い続けるしかなさそうですね。