生物は考えられないような歳月をかけて進化を続けてきましたが、最新の研究によるとこれからはそんな努力は必要なくなるかもしれません。
新たに開発されたXNAという合成化合物でも、DNAの代わりに遺伝情報を蓄積し複製できることが、最新の研究で明らかになりました。しかも、この人工化合物は実験室環境でDNAと同じように進化させられると、研究の共著者でアリゾナ州立大学バイオデザイン研究所のジョン・チャピュー(John Chaput)氏は言います。
DNAの構成要素であるヌクレオチドは、A、G、C、Tの4種類の塩基でできており、そこに糖とリン酸基が結合しています。
英国立MRC分子生物学研究所のビトール・ピンヘイロ(Vitor Pinheiro)氏の率いる研究チームは、まずDNAに含まれる天然の糖を、6種類の合成高分子化合物(ポリマー)のいずれかで置き換えることによって、6つの異なる遺伝システムの構成要素となるXNAを作成しました。
チームは次に、ポリメラーゼという酵素のうち、DNAからXNAを作り出せるものを開発しました。またXNAを元のDNAに戻せる別のポリメラーゼも作り出すことに成功しました。
このように複製と変換ができるということは、遺伝子配列を何度でも複製して受け渡せることになる。つまり、人工的に遺伝を行えるということになります。
最後にチームは、6種類のXNAポリマーのうちの1つ、HNAを用いて、試験管の中で選択圧(自然選択を生む要因)をかけました。するとこれに対する反応が確認されました。選択圧を受けたHNAは違った形に進化しましたが、これはDNAの場合に期待される反応と同じだといいます。
このことから、「一部のXNAでは、単なる遺伝だけでなく、ダーウィン的な進化も可能だ」と分かったと研究チームは論文に書いています。「つまり、遺伝と進化という生命の2つの特徴は、DNAやRNAの専売特許ではない」といいます。
XNAが生命の起源の謎を解く鍵に?
XNAの反応はすべて「実験を行う者の手で完璧に制御可能だ。完全に自然に反する」と、論文の共著者のチャピュー氏は言います。
しかし、このように制御できるということは、科学者はXNAを使って「(生命の起源のような)生物学のごく基本的な質問を問うことができる」とチャピュー氏は話します。例えば、「生命はDNAと蛋白質から始まったというのが今日分かっていることだが、そうでない可能性もあった。もっとずっと単純なものから始まっていたかもしれない」。
また、科学者の手でXNAを進化させて、初期の生命にとって重要だったであろうさまざまな機能を発見することもできるかもしれません。
要するに、今回の発見は「かなりクールで、すごく強力だ」とチャピュー氏は話しています。
今回の研究は、4月20日発行の「Science」誌に掲載されます。
これまでDNAや特定の物質にしか起こらなかったと考えられていた現象が、他のものでも起こり、さらにそれらには互換性があったということが分かった今回の研究。進化や退化、それどころか新しい生物を生み出すことや不老不死の人間を作り出すことも簡単に出来るようになるのかもしれません。