ヘビから仲間を守るヤモリが、今度は人間を守ってくれるかもしれません。
サイモン・フレーザー大学の研究者は、ヤモリの足に働いているファンデルワールス力に着目し、その原理を応用して垂直の壁を登ることができるロボットを開発しました。
ファンデルワールス力とは、電荷を持たない中性の原子、分子間などで主となって働く凝集力の総称であり、そのポテンシャルエネルギーは距離の6乗に反比例します。すなわち力の到達距離は短く且つ非常に弱いということです。また、この凝集力によって分子間に形成される結合を、ファンデルワールス結合(ファンデルワールスけつごう)といいます。
ヤモリはこの原理に則り、物体表面に足をくっつけるファンデルワールス吸着という状態を特殊な足裏の構造により実現しているとされています。今回開発されたロボットは、この原理とヤモリの足裏構造を模してつくられており、「キャタピラー状のベルトには髪の毛の10~15分の1程度、17×10マイクロメートルの大きさのキノコ型のパッドがついています。さらに、ヤモリの足と似た状態をポリジメチルシロキサン(PDMS)という素材によって再現しています。
今後は、このロボットにカメラを備え付けることで配管、航空機内、建物内、原子力施設内の点検や瓦礫に埋もれた人の探索などの用途を考えています。そう遠くない未来に、ヤモリの足から生まれた技術によって人間が救われる日も来るのかもしれません。