昨今、都市部の気温が異常に高くなるヒートアイランド現象が問題となっていますが、その原因の1つに鉄筋コンクリート製の高層ビルが挙げられます。しかし、建築家マイケル・グリーンさんが提案する木造高層ビルが実現すれば、これらの問題は解決するかもしれません。
現在マイケルさんは、カナダ・バンクーバー・ブリティッシュコロンビア州に30階建ての木造高層ビルを建てる計画を立てています。この木造ビルの主要な建築材料は木材を使う予定で、一般的に使われている鉄筋コンクリートなどは仕様しないといいます。
近代的な木材製品を仕様することで耐久性や耐火性を向上させます
マイケルさんは「我々は(木造建築で)30階建て以上の建物を建てることができると考えている」と語ります。また「私たちは(鋼とコンクリートの出現した)100年前から木材を利用した建築の模索をやめてしまいました。今、我々は大量の木材を利用した全く新しいシステムを構想している」といいます。
マイケルさんによると、木材の使用にはたくさんのメリットが存在するといいます。鋼やコンクリートの製造には多くの二酸化炭素を排出し、環境に大きな負荷を掛けますが、木材をしようすれば二酸化炭素の増加を食い止めることができます。また、木材を使うことで建設費用を削減でき、鉄筋コンクリートよりも低価格で建築物を建てられるといいます。
木造構造は、環境とコスト両面で鉄筋コンクリート構造に勝るといいます
良いことずくめのように思える木造建築ですが、木材の使用にはデメリットも存在します。例えば、木材調達による森林破壊の懸念や高層建築物で火災が発生した際における耐火性能、また鉄筋コンクリートに比べた木材の強度の低さなどです。
これらの問題に対しマイケルさんは、森林破壊についてはヨーロッパや北米など森林管理に気を使っている地域から木材を調達することで森林破壊を防ぐことができるといいます。また、いくつかの特殊な加工が施された最新の木材パネルを用いることで、建築物の強度を増加させ、耐火性能を持たせることができるといいます。マイケルさんはこれらの理由から、木造建築でも高さ100mの建造物を建てられることを信じています。
現在ある近代的な木造建築物の1つ。9階建て高さ30mの集合住宅ビル
30階建ての木造建築は夢のように聞こえますが、イギリスのロンドンではすでにその試作品ともいえる木造ビルが建設されています。ロンドンにある9階建ての木造ビルは、高さが30mあり実際に住宅として使用されており、この木造ビルこそが木造建築の可能性を切り開く証明だといいます。
さらに、この木造ビルの建設者は15階建てまでなら十分に建造可能だといいます。しかし、最近の景気の低迷や建築基準法の観点から、これ以上の高層木造建築の建設は考えていないといいます。
この木造ビルは、ロンドンで最もエネルギー効率の高い建物の1つとされており、高い機密性を保持しています。加えて、プレハブ構造によって鉄筋コンクリート製の建造物よりも、短い期間で低コストで建造することができたといいます。
近い将来、もしかするとコンクリートジャングルと呼ばれてきた都会は、高層木造建築物によって普通のジャングルになってしまうのかもしれません。