エネルギー問題の切り札は、どうやら「エビの握り寿司」にしか見えない深海の生物だったようです。
太平洋のマリアナ海溝の水深約1万900mに生息するエビの体内から、おがくずや紙などを高効率で分解する酵素を発見したと、海洋研究開発機構のチームが16日付の米オンライン科学誌プロスワンに発表しました。
情報によると、今回発見されたこの酵素を利用すれば、枯れ木や古紙などから、次世代燃料に期待されるバイオエタノールの原料を生産できる可能性があるといいます。
チームは2009年、同海溝の世界最深部に多数生息する「カイコウオオソコエビ」を採取。食性を調べようと消化酵素を解析し、植物を分解する4種の酵素を検出しました。このエビはたまに上層から降ってくる生物遺骸を餌としており、1000気圧を超える環境に適応しています。沈殿した植物片を食べ、栄養を取っていると見られています。
これまでバイオエタノールの生産に必要な原料はトウモロコシなどの穀物が一般的で、消費しても大気中の二酸化炭素を増やさないため自然環境に優しいとされてきました。しかし、穀物をエネルギー源とすれば穀物価格の高騰から食糧問題を引き起こすことや原料を作り出すために田畑を広げることで自然破壊を引き起こすことが指摘されてきました。
ところが、枯れ木や古紙といった食べられないものが原料とすれば、ゴミを減らすことができ、さらには燃料を確保することができます。森林が国土の6割を超える日本では、大いに役立つ技術となりそうです。