シリコンポリマーとネズミの心臓の細胞で作られたクラゲのレプリカが、海洋の塩水に似た水の中を「泳ぐ」様子が22日、公開されました。これはバイオミミックリー(Biomimicry:生物模倣)と呼ばれる分野の研究で、筋肉のポンプ作用に関する新たな知見を提供しており、将来的には、心疾患の患者に小型の心臓を提供できるようになる技術へとつながるかもしれません。
映像では、まるでホンモノのクラゲのように拡大と収縮を連続した行うことで人工クラゲが泳いでいる様子が確認できます。
生物工学を研究する論文の共同執筆者は、水族館でクラゲの運動を見たときに、心臓のポンプの類似点と相違点に着目したと語ります。
このクラゲのレプリカは、ギリシャ神話に登場するヘビの頭髪を持つ怪物メデューサから「メデューソイド(Medusoid)」と名付けられました。
シリコン製のメデューソイドは、8本の足に相当する部分に分かれており、本物のクラゲのもつ筋組織に似せたタンパク質のパターンがコーティングされています。このタンパク質は、ネズミの心臓筋肉から採取された細胞が成長する土台の役割を持ちます。
メデューソイドを動かすため、研究チームは、塩水に1~5Vの小さな電圧をかけ、メデューソイドの筋細胞が規則的に収縮と弛緩を繰り返すようにしました。実際に電流を流すと、メデューソイドの体は開閉を繰り返しながら水槽内を移動しました。
論文は22日の英科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」に掲載されました。
人間の身体活動の多くは筋肉の拡大と収縮によって行われるため、この技術研究が進めば人体の多くの部分を代替できるかもしれませんね。