多くの人が悩んでいる脱毛。これまでにもさまざまな治療法が研究されてきましたが、必ずしも効果があるものとはいえません。
ところがこのたび、ペンシルベニア大学の科学者はハゲの理由となっているを突き止めたとしています。さらに同大学のGeorge Cotsarelis博士は、この研究成果を基にした治療法の確立を2年以内に実現させるために製薬会社と交渉していることを明らかにしました。
George Cotsarelis博士は、ある酵素が毛根に作用することでハゲると説明しています。
男性型脱毛症にはテストステロンと遺伝の両方が関わっていることは知られていますが、脱毛に至る正確な原因とプロセスについては未だに明らかになっていないため、博士らは男性脱毛症になり、毛髪移植した22人の白人男性(45~65歳)の頭皮組織を分析しました。頭皮組織を採取された22人は、全員男性型脱毛症治療薬であるミノキシジルまたはフィナステリドのどちらも未使用でした。
同一人物の毛が抜けてハゲた部位の頭皮組織と毛髪のある部分の頭皮組織を遺伝子解析した結果、ハゲている部分の頭皮組織には「プロスタグランジンD2」という物質が、毛髪のある部分の頭皮に比べて3倍も高い水準で存在することが明らかになりました。
そこでさらに博士らは、マウスを使用して「プロスタグランジンD2」を皮膚で増加させたらどうなるかを実験した結果、脱毛促進、毛包の縮小、皮脂腺の増生などヒトの男性型脱毛の特徴すべてが発現しました。また培養した人間の毛包を使用した実験でも同様でした。さらにマウスを使った第2の実験で毛髪成長抑制には、「GPR44レセプター」が関与して生じていることも明らかになりました。
博士らはこの結果から、脱毛後の頭皮に毛髪が再生できるか、脱毛を予防することができるかは今後の研究によるが、「プロスタグランジンD2」と「GPR44レセプター経路」をターゲットとし、「GPR44レセプター」をブロックするような薬剤治療が男性型脱毛症の直接的効果を持つ治療法になるのではないかとしていました。
さらに今回、このハゲの原因となる物質を阻害するを発見。この物質はすでに喘息やアレルギー症状を抑えるために用いられているといい、薬局でも発売されているとのこと。しかし、飲んだだけでは頭皮に効果がないため、この喘息用の薬品をローション状にして頭皮に塗ることができるようにしなければなりません。
現在、博士らはこの薬品について製薬会社と交渉中とのことで、早ければ2年後には市場にハゲ治療薬が出回っている可能性があるといいます。
実際に効果があるのかや副作用があるのかなどの問題は残っていますが、すでに使われている実用化されている薬ということもあり認可されるのも新薬に比べて早そうですね。多額の費用や痛みを伴うハゲ治療が、数年以内に低価格で痛みもなく行えるようになるかもしれません。