昔の音楽に慣れ親しんでいる人の中には「最近の音楽はうるさくて、オリジナル性がない」と愚痴をこぼす人もいますが、あながち間違ってはいないかもしれません。
英科学誌ネイチャー系列のオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に26日付で掲載された研究では、1955年から2010年までに世界中で作られたロック、ポップ、ヒップホップ、メタル、エレクトロニックなどさまざまなジャンルの音楽から選んだ50万近くの曲をコンピューターで分析しました。その結果、音量レベルが常に上がり続けている一方で、コード進行やメロディーの多様性は過去50年間で一貫して減少を続けていたといいます。
論文を執筆したスペイン科学研究高等会議(CSIC)のホアン・セラ氏によれば、この分析結果を踏まえれば「古い歌を簡単に現代風に編曲する方法が導き出される」といいます。セラ氏は「よりありふれたコード進行を使い、楽器編成を変え、録音音量を大きくするだけでいい」と言います。
この名曲も単純化の結果?
研究チームは、音楽の中にあるパターンを探すため、さまざまな音楽要素のアルゴリズムを分析しました。その結果、「収集された多くの証拠が、現代西洋ポピュラー音楽の創作と制作において、進化が阻害されている、あるいはまったくしていないという意味で、慣例主義が大きく存在していることを示していた」と論文は述べています。なお、分析対象となった曲名は具体的には挙げられていません。
耳障りがよかったり心地よい気分になるための曲を大量生産するシステムが確立され、さらにレコードやCDを少しでも多く販売するため大衆が気に入る音楽を積極的に提供してきたことが、このような結果を生んでいるのかもしれませんね。また複雑な古い曲を楽しむためには、それなりの聞く能力が必要なのかもしれません。