大津市教委の沢村憲次教育長は12日、報道陣の取材に応じ、大津市で市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、男子生徒の自殺原因について「さまざまな要因が考えられる。私どもの認識そのものは変化していない」と語りました。この日午前の会見では「いじめが要因の一つ」と発言していましたが、改めて真意を問われ、いじめと自殺との因果関係は断定できないとする従来の姿勢を示しました。
一方で、男子生徒の手を縛るなど、滋賀県警が暴行容疑で捜査を始めた体育祭での同級生の行為について、居合わせた女性教諭が注意し、やめさせていたことが分かりました。さらに学校側が自殺直後に在校生に実施したアンケートに、回答した生徒らに、実際にいじめなどがあるかどうか聞き取る過程で記した膨大なメモがあることが12日、関係者への取材でわかりました。
沢村憲次教育長は、自殺した生徒が生前「泣きながら担任に電話をしてきた」とする在校生アンケートの回答について、「電話内容の詳細はプライバシーの問題があり言えないが、家庭内のことと聞いている」としました。
警察による強制捜査については、「背景には学校内でのいじめもある」としながらも、「亡くなったお子さんが家庭内でどんな環境に置かれていたのか、家庭内で何が起きていたのかということも、背景調査で明らかになるのではないか」と述べ、自殺にはいじめ以外に家庭内などの要因もあるとの見方をにじませました。
一方で、体育祭で生徒が暴行を受けていた生徒を女性教諭が目撃・注意していた事実や自殺後に行われたアンケートに関する追跡調査の膨大なメモが発見されており、学校側は生徒が自殺する前からいじめられていることが分かっており、自殺後にもいじめの事実を把握していた可能性が浮上しています。
複数の生徒によると、昨年9月29日の体育祭の昼食時間に、会場の観客席で、男子生徒が同級生3人から鉢巻きや粘着テープで手や足、口を何重にも巻かれていたといいます。この状態の男子生徒を同級生の1人が背負い、別の2人が男子生徒の背中を蹴る場面もありました。
この様子は、周囲の複数の生徒や教諭が目撃していたといいます。間もなく、女性教諭が同級生3人に「やめなさい」と注意しました。3人は「はーい」などと言って粘着テープをはがすなどし、男子生徒の拘束を解いたといいます。
ある生徒は「同級生は男子生徒の背中をかなり強く蹴っていた。周囲の生徒が注意できるような雰囲気ではなかった」。別の生徒は「男子生徒は、いじめられているように見えた」と証言しました。
昨年10月の男子生徒の自殺直後の学校のアンケートでは、生徒20人が男子生徒が縛られた様子などを目撃したと回答しました。一方、同じ頃の教職員からの聞き取り調査で、全ての教職員が「これまで、男子生徒がいじめられていたという認識を持ったことはない」と答えていました。
捜査関係者によると、体育祭での同級生の行為は、生徒だけでなく教諭も見ていた可能性が高いといいます。県警は13日から順次、教職員から事情を聴く方針で、実際に目撃したとされる教諭らから、当時の状況などについて詳しい説明を求めるとみられています。
また市教委によると、自殺後のアンケートはいじめの実態を調べるため、昨年10月中旬、学校が全校生徒859人を対象に行い、約8割の生徒が回答しました。アンケート結果には伝聞の情報が多く、記名、無記名がありましたが、記名の回答については、学校側が事実かどうか生徒に追跡調査しました。この過程で、教員が生徒らから聞き取ったメモが学校に大量に残されていることが判明しました。
関係者によると、聞き取り調査は、保護者の同意のもと、担任らがノートなどに記録していました。また、少なくとも10人の生徒が県警の捜査容疑となった暴行を直接目撃していた、といいます。
県警は11日、事実関係の究明が必要として捜査に着手。同級生だった3人が男子に暴力行為をしていたとして暴行容疑で、中学校と市教委を家宅捜索し、いじめの調査ファイルなど関係資料約130点を押収した。
このことから学校・行政は、生徒が自殺する以前からいじめられていたことを認識していた可能性が非常に高いといえます。にもかかわらず、そのことを隠そうとする姿勢が沢村憲次教育長の発言から読み取ることができますね。
今回自殺した生徒だけでなく、現在いじめられている多くの子供や将来いじめられるであろう子供たちのためにも、行政は保身せずに原因の追究と対策を徹底的に行ってもらいたいものです。