脊髄損傷でまひしたラットを、脊髄電気刺激と補助機器を使ったリハビリ治療を通じて再び歩けるようにする実験に欧州の研究チームが成功し、米科学誌サイエンスに論文が掲載されました。
研究を率いたスイス連邦工科大学ローザンヌ校のグレゴワール・クルティーヌ氏によると、この研究を成功に導いたポイントはラットに自らリハビリを行うよう促したことだといいます。
リハビリ治療では、脳が四肢を動かす際に発する信号を模倣した電気化学的刺激を脊髄に送ると同時に、補助機器を使ってラットに真っすぐ立った姿勢を保たせるようにしました。ラットはハーネスによって2足歩行の状態に吊り上げられ、よろめかずに歩けるよう体を固定されました。このハーネスには歩行そのものを補助する機能はありません。
ラットの前方には報酬としてチョコレートを置きました。ラットはすぐに何歩か歩くことに成功し、2週間で補助器具を使っての歩行、5~6週間のうちに餌のチョコがなくても自力で階段を登ったり、行く手の障害物を避けたり、走ったりできるようになりました。このリハビリ後、ラットの脳と脊髄を接続する神経は3倍に増えたといいます。
クルティーヌ氏によると100匹を超えるラットでこの治療方法を試しました。効果の程度には個体差があったものの、全てのラットで自発的な運動が回復したといいます。
リハビリ開始当初ラットは悪戦苦闘していましたが、「初めて成功したときラットは驚いた様子だった。まるで『うわっ、ぼく歩いた!』と言っているみたいだった」とクルティーヌ氏は語りました。
半身不随によって歩行が困難な患者も、この治療法の研究を進めることで歩けるようになるかもしれませんね。