シリアに展開する国連停戦監視団のムード団長は26日、中部ホムス県ホウラで、戦車による砲撃などで10歳以下の子ども32人を含む90人以上が殺害されたと確認した、とする声明を出しました。クリントン米国務長官は「政権の砲撃による虐殺」として強く非難。政権側は関与を否定しています。
ホウラでは25日から26日にかけ、砲撃などで多数の市民が死亡しました。ムード団長は声明で「戦車砲などが使われていた」と指摘し、名指しを避けつつ、政権軍による攻撃だったことを示唆。「関与した者の責任が問われるべきだ」と述べました。反体制派は「政権軍が砲撃したうえ、政権支持の私服民兵らが住民を銃撃した」としています。
現地からの映像では、顔や体のあちこちに傷を負い、死亡した幼児の遺体が何体も横たえられ、モスクの床には、白い布のようなものに包まれた遺体が数十体が並べられているのが確認できました。
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長とアナン国連・アラブ連盟合同特使は連名で「無差別かつ圧倒的な武力行使を伴う残忍な犯罪で、目に余る国際法違反。シリア政府は約束を破った」と非難する声明を出しました。
ロイター通信によると、ヘイグ英外相は数日中に国連安保理の会合を開くよう呼び掛ける考えを示しました。
国連監視団は間もなく定員の300人に達する予定。潘事務総長はアナン調停案の柱である監視団派遣の効果が乏しいことは認めつつも、代替案はないとしています。7月の派遣期限まで活動を維持するためにも、アサド政権批判を強めているとみられています。
まったく関係のない子どもたちが犠牲になった今回の事件。「アラブの春」によって中東情勢は不安定な状態となっているようです。