映画『50回目のファースト・キス』では、交通事故の後遺症により事故前日までの記憶は残っているが以後の記憶が全て一晩でリセットされてしまうという短期記憶喪失障害を患うヒロインをドリュー・バリモアが演じました。映画の題材としては非常に面白いコンセプトですが現実には悪夢のようなものです。19歳の女性ジェス・ライドンさんは、なんと記憶障害に陥り過去24時間の記憶しか保てなくなりました。
ライドンさんは、「susac症候群」という病気の影響によって脳に記憶障害が起こり、24時間しか記憶をとどめておくことができなくなりました。そのため、昨夜の夕食に何を食べたのかを覚えておくことができないといいます。また、ライドンさんの誕生日であるクリスマスにパーティーを行っても、そのことを覚えておくことができず、後日、パーティーのときに撮影した家族写真を見て混乱するということもありました。さらにひどいことに、ライドンさんは2年前にボーイフレンドと別れましたが、毎朝起きるとボーイフレンドと別れたことを家族に説明され、そのたびに失恋するという状態にあります。
「susac症候群」は、世界で250例しか報告されていない非常に珍しい脳疾患です。症状としては、網膜動脈分枝閉塞症、難聴、脳症などを引き起こし、耳鳴り、めまい、頭痛などを引き起こすもので、ライドンさんのような記憶障害を引き起こすケースばかりの病気ではありません。ライドンさんの場合、今後、症状が改善するか聴覚や視覚を失うような深刻な問題を引き起こすかは分からないといいます。
24時間しか記憶が保てないということは、嫌なこともすっぽり忘れられる反面、思い出も失ってしまうということになります。まるで映画や漫画に出てくるようなこの症状、もしあなたがライドンさんのように、24時間しか記憶を保てなくなったらどうしますか?