古墳から出土した古代の鏡「三角縁神獣鏡」を復元して光を当てると、反射した光が裏に描かれたものと同じ文様を映し出す現象が起きることを、京都国立博物館などの研究グループが明らかにしました。研究者は、当時の権力者が神秘的な鏡を使い権威を高めたのではないかと注目しています。
京都国立博物館の村上隆学芸部長などの研究グループは、古代の鏡の三角縁神獣鏡が、作られた当時、どのような性質を持っていたのか調べました。
発掘された実物はさびついてほとんど光を反射せず、磨くこともできないため、比較的保存状態のいい愛知県犬山市にある「東之宮古墳」から出土した三角縁神獣鏡にレーザー光線を当てて、形を精密に計測しました。
そのうえで、実際と同じ銅などを使い、3Dプリンターで複製し、表面を磨いて、作られた当時の姿に仕上げました。これに太陽の光などを当てると、反射した光が、鏡の裏に描かれた物と同じ文様を映し出すことが分かりました。
この現象は「魔鏡現象」と呼ばれ、鏡にごく薄い部分と厚い部分があることで、反射面にごく僅かな凹凸ができて起きるとされています。魔鏡現象を起こす鏡は、最も古いものでは紀元前1世紀ごろ、古代中国の前漢の時代に作られたとみられる「透光鑑」と呼ばれる鏡が見つかっています。
日本では江戸時代、キリシタンの人たちが、ひそかにキリストの像などを映す鏡を信仰に使っていたことが知られていますが、復元した古代の鏡でこの現象が確認されたのは初めてです。
「卑弥呼の銅鏡」として知られる三角縁神獣鏡には、驚くべき機能が画されていたみたいですね。