「ゲル(パオ)」とは、主にモンゴル高原に住む遊牧民が使用している伝統的な移動式住居のことです。このモンゴル特有の移動式建物をたった1時間で建ててしまう様子をとらえた映像をご紹介します。ゲルってこんな簡単に建てることができるんですね。
ゲルは円形で、中心の柱(2本)によって支えられた骨組みをもち、屋根部分には中心から放射状に梁が渡されています。これにヒツジの毛でつくったフェルトをかぶせ、屋根・壁に相当する覆いとします。壁の外周部分の骨格は木組みで、菱格子に組んであり接合部はピン構造になっているので蛇腹式に折り畳むことができます。(「マジックハンド」と呼ばれる玩具の伸縮部分と構造は同じです)
木組みの軸にあたる部分にはラクダの腱が使われます。寒さが厳しいときは、フェルトを二重張りにしたり、オオカミなどの毛皮を張り巡らしたりして防寒とします。逆に、夏の日中暑いときはフェルトの床部分をめくり、簡単に風通しをよくすることができます。
内部は、直径4~6mほどの空間となっており、ドアがある正面を南向きにして立てられ、入って向かって左手の西側が男性の居住空間、向かって右手の東側が女性の居住空間となっています。中央にストーブを兼ねた炉を置いて、暖をとり、料理をするのに使います。炉は東側を正面にするように置かれており、女性の側から扱いやすいようになっています。向かって正面はもっとも神聖な場所で、チベット仏教の仏壇が置かれたりします。頂点部は換気や採光に用いられるよう開閉可能な天窓になっており、ストーブの煙突を出すことが可能となっています。(参照:Wikipedia)
映像では、蛇腹状の木製の枠に屋根や扉を付けて、最後に布のようなもので覆っており、現代で一般的に使われているテントと同じような構造となっています。
しかしながら、モンゴルというと勝手に馬なんかを想像しますが、自動車で輸送しているのを見ると、伝統を守りながら新しいものを取り入れている”器用さ”を感じさせられますね。
モンゴル帝国の時代ころまでは車輪をつけ、ウマを使って引っ張って長距離を簡単に移動できるゲルが存在したことが、当時の旅行記の記録からわかっています。現在は、それほど大規模な移動は行われないため、移動のたびに分解してラクダの背やトラックに乗せて運びます。分解や組み立ては共に遊牧を行う数家族の男たちが総出で行ない、数十分から1時間で終わります。