眠っている間に、いびきをかいたり、寝言を言ったりする人は、誰もが見たことがあるのではないでしょうか。もしかすると、寝ながら歩き回る人を目撃したなんてこともあるかもしれません。しかし、眠りながらアートを制作するなんてのは前代未聞なのではないでしょうか?
イギリスのロンドンで活動するアーティストのリー・ハドウィンさん(37歳)は、眠りながらにして無意識の間に素晴らしい絵画を制作してしまうという夢遊病アーティストです。世界的にも稀な、奇妙な芸術家はどのようにして絵を描くのでしょうか。
2011年5月に撮影された眠りながら絵を描く様子
ハドウィンさんに、睡眠時遊行症(夢遊病)の症状が出始めたのは4歳の頃でした。眠っているはずなのに、まるで起きているかのように壁に絵を描き始めたといいます。
この寝ながら絵を描くという症状に両親が困惑しているのとは裏腹に、より美しくより複雑な絵を描くようになり、成長とともに絵の才能も伸びていきました。15歳頃にはその才能に気付き、10代後半になると壁やテーブルなどのいたるところに絵を描くような状態となりました。このときには、マリリン・モンローの肖像画などのレベルの高い作品を制作するようになっていました。
そんなハドウィンさんも現在では、絵画を作成するためのスケッチブックや画材を揃えてから毎晩眠るそうです。また、これまでに200作品以上を描いており、その作品は高く評され1作品につき6桁(10万ポンド、約1250万円)以上の値が付くこともあります。
ところが、起きているときには「絵が描けない」というほど絵が下手なようで、学校の美術の成績は散々なものだったといいます。
これらの症状について専門家は、睡眠療法の観点から見ると”重度の精神的外傷のサインとしてこの能力が発揮しているのではないか”と説明しています。診断のとおり、ハドウィンさんは、幼いときに親しい友人を5人も亡くしたという過去があり、そのことが原因であるのかもしれません。