芸術に対して天性の才能を持つ人は、手足が動かないことがその創作活動を止める理由とはなりません。イギリス・ノーフォークに暮らすスティーブ・チェンバーズさん(50歳)は、生まれつき手足が動かないにも関わらず、歯で筆を噛んで口にくわえることで筆を使い、素晴らしい絵画を制作しています。
チェンバーズさんは、生まれつき「関節拘縮症候群」という病に苦しめられています。この病気にかかった患者は、筋肉や関節が固まることで可動範囲が狭まり、動くことができなくなってしまいます。チェンバーズさんの場合は、腕の筋肉がないため動かすことが出来ず、足の関節は固まってしまっています。
しかしチェンバーズさんは、病気でありながらも早い時期から絵を描き始めました。そして、筆を口でくわえて持てるようになるには、予想に反してそれほど長い時間はかからなかったといいます。
チェンバーズさんは「あなたが手でスプーンを持つように、私は口で筆を持つことができます」と言います。しかし、えんぴつを使うようになってからは、筆のように使いこなすことが出来ずイライラしたといいます。
チェンバーズさんが芸術を志すようになったのは、家族、特に祖父の励ましによるものだったそうです。庭の小屋で祖父から絵を学んだチェンバーズさんは、18歳で芸術大学に入学しました。その後、22歳で結婚して4人の子供の父親となったチェンバーズさんは、絵の具や色鉛筆を使うユニークなスキルを身に付け、現在では主に水彩画を描いています。
地元の風景やロンドンの観光名所を描く彼の作品は、豊かな色彩と瑞々しさに満ちています。現在チェンバーズさんは、世界に800人のメンバーがいる口と手を使って絵を描くアーティストのための「マウス・アンド・フット・アーティスト協会」のメンバーとしても活躍しています。