芸術は人間だけが創り出せるものだと思っていましたが、21世紀の現在ではロボットまでもが芸術作品を創り出してしまうようです。
日本のアーティスト、菅野 創さんと山口崇洋さんによって製作された「SENSELESS DRAWING BOT」は、抽象的な壁画を描くことが出来る不思議なロボットです。
このロボットは、二重振子のカオス性をもった動きを利用し、スプレーを用いてダイナミックに抽象的なラインをリアルタイムに描画する自律生成型ドローイングマシンです。二重振子を取り付け、独自に改造を施した電動スケートボードが、振子の支点に取り付けたロータリーエンコーダによって振子の向きを判断し、左右に運動することで振れ幅を増幅させ、振子の運動量がある閾値を超えると、瞬く間に壁面へ描画を行います。
このロボットの意義は、現代の表現として世界で広く認知されている『グラフィティ』と呼ばれる落書き行為から、人間の身体や主張を排除して描画プロセスに宿るダイナミズムを抽出することで、その行為を模倣することにあります。即興性や、記号性、ヴァンダリズムとしての側面といった要素のみを提示することで、この行為の本質は一体どこにあるかを探り、新しい解釈につなげることを試みています。
ヌンチャクのような二重振子のアームによって描かれた無意味な線ですが、なぜか人間がテキトーに描いたかのような味があります。人間の腕も見方によっては二重振子ですから同じような線を描くのも分からなくもないですが、やっぱり不思議です。